オントロジーとは結局なんであるのかを理解するのは,本当に難しい.時々オントロジーが分かるのにどのくらいかかりますかという質問を受けます.以前は1年半ほどと答えていたように思いますが,今ではよいテキストや環境も整ってきていて,半年ほど頑張ればと答えることができるようになりました.オントロジーが知識ベースの発展形であることは間違いないのですが,オントロジー研究は,新しくオントロジーを必要とした人がスクラッチで開発することなく,他人の開発したオントロジーを流用したり,新たな知識を追加したり,さらにその知識追加されたオントロジーがまた出版されて他人に再利用可能となることを目指しています.すなわち,過去の知識ベースとの違いは,知識の集積が蓄積的であり,永続的であり,流通可能であり,当初と異なる目的にも少しの改造で再利用可能であることを目指しているところにあります.
そのような知識ベースとの違いを明確に意識したオントロジー研究は,1995年ごろから進められてきました.幸いなことに,日本では大阪大学の溝口研究室(当時)によって「正しい」オントロジー研究が進んできましたが,世界的にはそうなっておらず,特にセマンティックウェブの世界ではウェブオントロジー言語OWLの事実上の標準化によって,一見ものごとが進んできているように見えていますが,オントロジー研究者の参加がなかったために,その将来にはオントロジー研究として解決されるべき問題が,一口には言えませんが,ロール概念の問題,文脈の問題,クラス・インスタンスの問題,メタクラス化の問題等,多く山積しています.
最近ではセマンティックウェブのサブフィールドであるリンクト・オープン・データ(LOD) がセマンティックウェブのキラーアプリとして,現実に普及しつつありますが,一部にはウェブ上でのデータの蓄積・閲覧と再利用というLODの目的を理解せずにLODと喧伝される例も散見されるようになり,ここでも表面的ではない,より一段と本質的なLODの理解が求められています.
表面的なレベルではなく意味のレベルで,と言って難しければ,人が理解するのではなく機械が理解できるような程度に,オントロジーを整理し,その統合・分割・再利用が自在に可能なようにする必要がありますが,残念ながら現状はまだそうなっていません.
オントロノミー, LLC は高品質なオントロジーの開発と提供を通じて,知識社会の建設に貢献します.